アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024におけるオンライン診療の位置づけ
少し前の話になりますが、2024年の11月に報告されたアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024に当院でも行っているオンライン診療に関する記載がありました。
前回が2021年の改訂版でしたので、約3年ぶりに更新されました。
ガイドラインとは診断・治療などの指針や指標となるものであり、ガイドラインを参考に医師(特に専門医)は治療方針を決定することが多いように思います。
アトピー性皮膚炎の治療薬に関しては2018年のデュピクセント発売以降、日進月歩でして、毎年のように新しい薬が発表されています。我々としても、どのような患者さんに、どのような薬剤が適しているのかを判断するのが難しいのでこのようなガイドラインや、勉強会・講演会を参考にして、日々の治療を行っています。
さて今回発表されたアトピー性皮膚炎のガイドラインの中で、オンライン診療に関する記載がありました。
当院でもオンライン診療は開院当初から行っておりまして、様々な皮膚疾患の患者さんに対応しており、利用してもらっています。オンライン診療に関してはまた後日、詳しく記載しようと思います。ある程度向き不向きのある疾患もありますが、全般的には皮膚科疾患はオンライン向きであると思っています。オンライン診療に適していると思う疾患は①慢性蕁麻疹で内服でコントロールが良い人、②多汗症、③アトピー性皮膚炎のコントロールの良い人、④学校や部活などでなかなか定期的に通院できないニキビの人、⑤帯状疱疹後神経痛で内服でコントロールが良い人、などはオンライン向きであると思っています。その他には、当院で積極的に行っている、オンライン診療を併用して術前・術後の診察を行う日帰り手術なども適しているのではないでしょうか。忙しい方でなかなか、頻回に受診はできないが、ほくろ、イボ、粉瘤などの手術を行いたい方に利用してもらっています。
以下はアトピー性皮膚炎ガイドライン2024からの抜粋です。
オンライン診療を利用した維持期治療
寛解導入後に適切な維持療法によって良好なコントロールを長期間にわたって維持することは大変重要である.そのためには良好なアドヒアランスが必須であるが,患者にとって治療継続の負担は少なくない.とくに社会活動豊富な年代を多く含む本疾患において,医療機関への定期的な通院は通勤・通学に支障を来して,QOL の低下を招く場合がある.しかし,定期通院を怠ると容易に増悪につながることは明らかである.そこで,負担を最小限にして治療を継続するために,オンライン診療が有用な選択肢となる.実際にアトピー性皮膚炎治療におけるオンライン診療の有用性に
ついての報告も増えている.免疫抑制薬などの全身投薬や光線治療を必要としないアトピー性皮膚炎の小児・成人患者 156 人を対象として,オンライン診療と対面診療を 1 対 1 にランダム化して検討した試験では,12 カ月のフォローアップ期間中,オンライン診療の群で POEM スコア,IGA スコアともに対面診療と同等の改善率であった).同様
に,DLQI,CDLQI,SF-12 PCS,SF-12 で評価したQOL の改善についてもオンライン診療群は対面診療群と同等であることも報告されている).
費用対効果の面でも,199 人を対象に初診でアトピー性皮膚炎と診断されている患者において,e-health(オンラインによるコンサルト)での外来フォローを対面診療の間に行うことは,QOL や疾患の重症度については対面診療と同等である一方,コストの面での改善に寄与すると報告されている).e-health には教育用の資料提供や患者のモニタリングなども含まれるため,日本におけるオンライン診療の概念と完全に一致するものではないが,費用対効果の面でも一定の価値はあるものと考えられる.
本邦におけるエビデンス構築は今後さらなる検討を要するが,少なくとも,安定したアトピー性皮膚炎に対してはオンライン診療を組み合わせて診療することにより,患者や患者家族の負担を最小限にしながら,アドヒアランスをサポートして,寛解を維持させることが期待される.そのためには,診療報酬が適切に認められることが必要である.
要約すると…アトピー性皮膚炎がまあまあコントロールされている人においては、忙しくて通院できなくて悪化するよりはオンライン診療も選択肢の一つと考え、治療を継続したほうがいいでしょう。
ということになりますね。
水道橋駅前こばやし皮フ科形成外科 小林光