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脂腺増殖症に対するイソトレチノイン内服療法 

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脂腺増殖症の新しい治療

2024年6月号の皮膚科の雑誌に脂腺増殖症に対してイソトレチノイン内服療法が効果があるとの報告がありました。これまで、当院では、脂腺増殖症の治療はメスで円形にくりぬく方法やCO2(炭酸ガス)レーザーで焼灼する方法を採用していたのですが、多発する患者さんに対してはあまり良い方法がありませんでした。

6月以降、当院でも脂腺増殖症の患者さんにイソトレチノイン内服を試してもらっていますが、かなり経過がいいので報告します。

脂腺増殖症とは?

中年から高齢者の顔面(前額、頬、鼻)によくできます。8mm程度までの黄白色の中央が若干へこんでいる盛り上がりで多発することが多い病気です。

液体窒素、手術、CO2(炭酸ガス)レーザーで治療することが一般的ですが、再発や手術痕などが問題になっていました。

水道橋駅前こばやし皮フ科形成外科の脂腺増殖症前額部

この方の額、眉間にある3-5mm程度の皮膚~やや白色のできものです。ニキビなどとは異なり今までの内服薬や外用薬では脂腺増殖症は治療できません。

イソトレチノインとは?

ビタミンAの一種であり、通常のビタミンAと比較し薬理活性がかなり強いといわれています。皮膚に対する効果としては、①皮膚のターンオーバーの促進・正常化、②皮脂分泌の減少、③毛包漏斗部(毛穴の入り口)の角質の除去・正常化などがあげられています。

アメリカやヨーロッパのニキビ治療のガイドラインでは重症ニキビの第一選択役として推奨されている治療です。当院でも、重症ニキビに対して積極的に使用しています

実際の効果

50代の女性の脂腺増殖症に対して使用してみました。左頬部に大きな脂腺増殖症があります。

オレンジのマーカーで印をつけています。一ヶ月でかなり縮小してきました。

左頬部:内服前 左頬部:内服1ヵ月後
左頬脂腺増殖症・内服前 左頬脂腺増殖症・内服1ヵ月後

ダーモスコピーという皮膚表面を拡大する機器を使用して観察していますが、明らかに縮小しています。

左頬部ダーモスコピー:内服前 左頬部ダーモスコピー:1ヵ月後
脂腺増殖症ダーモスコピー・内服前 脂腺増殖症ダーモスコピー・1ヵ月後

皮脂腺の断面積が12週間で最大90%減少するとの報告があります。作用機序としては脂腺細胞のアポトーシス誘導といわれています。

 

皆さんお気づきでしょうか?小鼻の黒ずみが消失していますね。明らかに、ダーモスコピーでも毛穴の入り口の黒ずみがすべてキレイになっています。

私もダーモスコピーでイソトレチノイン投与後の毛包をしっかり見ていなかったのですが、ここまできれいになっているとは驚きでした。

注意点・副作用と費用

妊娠中、妊娠の疑いのある方、授乳中の方は内服できません。

欧米のガイドラインでは12歳から内服できるといわれています。

精神疾患、心疾患、肝疾患のある方は内服できません。

その他、相互作用がある薬剤が報告されているため、他の疾患で薬剤を内服中の方は診察時にお伝えください。

副作用の発生頻度は高い薬剤になります。

代表的な副作用として肝障害、皮膚のかさつき・痒み・赤みが報告されています。

 

  • イソトレチノインの値段

当院では20mg錠30日分で税込月16,500円で販売しています。

 

  • イソトロインに関する注意喚起

以下は厚生労働省のHPからの抜粋になりますが、皆様にぜひ参考にしていただければと考え記載しました。

米国食品医薬品庁(FDA)では、インターネットや個人輸入により入手すべきでない医薬品について、米国内の消費者向けに注意喚起を行っています。
 医師、薬剤師等の専門家の適切な関与の下で使用されなければ、健康被害を生じるおそれが特に大きい医薬品について、FDAの注意事項を一般の方が容易に正しく理解することができるよう、重要な注意事項の邦文訳を掲載いたしました。https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1b.htmlk

 

水道橋駅前こばやし皮フ科形成外科 小林光

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