腋窩多汗症に対するボツリヌストキシン局所注射療法について
腋窩多汗症とは
多汗症とは、汗が非常に多く、日常生活に支障をきたす状態を指します。多汗症の中でもワキの汗を主症状とするものを腋窩多汗症といいます。
原因によって「続発性」と「原発性」に分けられます。「続発性」は、他の病気が原因の場合です。「原発性」は、特定の原因がない場合です。
日本皮膚科学会は、原発性局所多汗症を「温熱や精神的負荷に関わらず、日常生活に支障をきたす程の大量の発汗を生じる状態」と定義しています。
多汗症は、発汗する部位によって「全身性多汗症」と「局所性多汗症」に分けられます。局所性多汗症は、脇の下、手の平、足の裏など、汗腺が多い部位に発生します。
発汗量は、温熱や病気、緊張などの精神状態によって増えることがあります。
「続発性多汗症」は、全身性の病気や局所的な神経障害、薬の副作用が原因です。感染症、神経疾患、糖尿病、低血糖、内分泌代謝異常などが原因となります。解熱剤や向精神薬、ステロイドの副作用も原因となります。
「原発性多汗症」は、発汗量が異常に多いが原因が不明な状態です。交感神経が過剰に働くために発汗が増えると考えられていますが、まだ明確な共通見解はありません。
原発性多汗症は、社会活動が活発な年代に多く、対人ストレスなど精神的苦痛が多い人に発症しやすい傾向があります。
また、家族内で多汗症の人が多いことから、遺伝性の可能性も指摘されています。現在、遺伝が多汗症に与える影響や原因となる遺伝子について研究が進められています。
腋窩多汗症の診断
シャツに汗シミができるなど、日常生活に支障をきたすほど多量のワキ汗が明らかな原因がないまま6か月以上みられ、以下の6症状のうち2項目以上当てはまる場合を「原発性腋窩多汗症」と診断します。
原発性腋窩多汗症の診断基準
☐最初に症状がでるのが25歳以下であること
☐左右両方で同じように発汗がみられること
☐睡眠中は発汗が止まっていること
☐1週間に1回以上多汗の症状がでること
☐家族にも同じ疾患の患者さんがいること
☐わき汗によって日常生活に支障をきたすこと
原発性腋窩多汗症の治療は
抗コリン薬の外用、塩化アルミニウムの外用、ボツリヌストキシン局所注射療法、内服薬、精神療法、機器による治療、手術療法などがありますが、今回はボツリヌストキシン局所注射療法について説明します。
ボツリヌストキシンとは
ボツリヌストキシンとは、ボツリヌス菌がつくるタンパク質から生成された薬であり、交感神経から汗腺への情報伝達を遮断します。ワキの皮内に直接注射することにより発汗量を減少させることができます。
汗の分泌を抑える効果は通常5~7日であらわれ4~7ヵ月にわたって持続します。効果の程度や持続期間には個人差があります。発汗抑制効果を維持するためには、4ヵ月以上の間隔で反復投与が必要です。
主な副作用
・腫れや赤み
皮内に薬液を注入するため数時間から一日程度、赤み、晴れが出る可能性があります。多くの場合数日以内に改善します。
・内出血
注射針を用いて、皮内に薬液を注入するため、血管に針が当たると、その部分の皮下出血が起きる可能性があります。
数日間、紫色になりますが、多くの場合は数週間後には改善しています。
治療の流れと金額
痛みを軽減するために2~3分ワキを冷やします。片側のワキあたりボツリヌストキシン50単位を15~20カ所に分けてワキの皮膚に注射します。治療は片ワキ5分程度で終わります。
当日のみ、激しい運動を控えていただきます。
金額は両脇33000円(税込)になります。
水道橋駅前こばやし皮フ科形成外科 小林光